Q&A

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    2021.02.15

    【借地契約の更新拒絶】賃料が低額だと正当事由が認められるか?

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    借地契約の期間満了時における更新拒絶や、賃借権譲渡許可の申立手続(借地非訟)において、地主側から、過去に支払われていた地代が低額(低廉)であったから、更新拒絶における正当事由が認められるとか、譲渡許可の申立は棄却されるべきであると主張されることが多々あります。

     

    しかし、地代が低額である点については、本来、賃料増額請求により、対応すべきであって、これをもって正当事由があるとはいえません(東京地裁平成27年9月7日判決)。

     

    これに対し、東京地裁昭和55年4月22日判決は、地主は、当該土地を取得した当初から将来当該土地を借地人から明渡して貰うことを考え、当該土地の賃貸借による経済的利益を全く考えておらず、そのためこの間の大きな社会的、経済的変動にもかかわらず賃料増額の請求を全くせずに今日に至ったことなどの事情が存在することなどをもって、相当な立退料の提供を条件に、正当事由が具備する旨判示していますが、あくまで、相当な立退料の提供を条件に、事情の1つとして判示しているに過ぎないことに注意が必要です。

  • qa

    2021.02.04

    【通行権】土地を購入したが、私道の所有者が通行を認めてくれない場合、どうしたらよいか?

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    私は、複数の不動産業者の顧問弁護士をしておりますが、先日、担当者から、このような質問を受けました。

     

    従前の売主の時には、通行が認められていたが、新たな買主に対しては、近隣住民である私道の所有者が通行を承諾してくれないというようなことが時々起こります。

     

    このような場合、私道の所有者の同意が得られなくても、通行が認められるか否かは、従前、どのような根拠によって、通行が認められていたか否かによって異なります。

     

    通行権

     

     

    ① 位置指定道路やみなし道路の場合


     

     

    当該通路が建築基準法上の道路に該当する場合、すなわち、位置指定道路(同法42条1項5号)やみなし道路(2項道路。同条2項)に該当する場合は、道路としての機能を期待されているため、買主に限らず一般人も当該通路を事由に通行することができ、当該通路の所有者はこれを妨げることはできません。

     

    ② 囲繞地(袋地)通行権が認められる場合


     

     

    購入した土地が袋地の場合には、公道に出るため、囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行することができます(民法第210条)。ただし、通行できる場所及び方法は、通行権者のために必要で、囲繞地のために損害がもっとも少ないものを選ばなければなりません(同法第211条)。

     

    また、購入した土地が従前袋地ではなかったが、分割されて袋地となった時は分割者の土地のみを通行することができます(同法第213条)。

     

    なお、囲繞地通行権は、平成16年の民法改正により、「公道に至るための他の土地の通行権」に改称されました。

     

     

    ③ 通行地役権が設定されている場合


     

     

    売買された土地の便益のために、当該通路を通行目的のために利用する内容の地役権が設定されている場合は、物権ですので、買主に地役権が移転し、改めて通路所有者の同意を得なくても、通行することができます。

     

    また、地役権は登記することができ、登記されていれば、通路の所有者が替わったとしても、新たな所有者に対しても、地役権を主張することができます。

     

     

    ④ 従前の売主と通路所有者との間で通路の利用契約が締結されていた場合


     

     

    このような利用契約は債権契約であり、契約当事者間のみにおいて法的拘束力を有するものであって、土地が売買されても、買主には承継されず、買主はこの利用契約に基づく権利を主張することができません。このような場合には、私道所有者の同意を得る必要があります。

     

     

     

     

  • qa

    2021.01.27

    【借地非訟】建物の朽廃とは?

     

    虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。

     

    借地権譲渡許可の申し立てをすると、地主側から、借地上の建物は朽廃(きゅうはい)しており、借地権は消滅しているから、申立は棄却されるべきである旨の主張がなされることがあります。これは、借地法第2条1項但書(第5条1項後段で準用)に基づく主張です。

     

     

    ●建物の朽廃とは


     

     

    朽廃とは、時の経過によって自然に建物の効用が失われた場合をいいます。

     

    法律上、朽廃と滅失とは異なる概念であり、滅失は、建物が物理的に消滅する場合であり、借地法上、朽廃の場合には借地権は消滅しますが、それ以外の理由により建物が滅失した場合には借地権は消滅しません(再築可能)。

     

     

    ●朽廃の判断基準


     

     

    建物が朽廃したと言えるためには、「自然的に達したことが必要であって、火災、風水害や地震により一挙に建物としての効用を失うに至ったり、取壊しのように人為的に建物の効用を失われた場合は『朽廃』には当たらない」と判示されています(東京地裁平成24年11月28日)。

     

    また、朽廃に至ったかどうかは、「建物を全体的に観察し、特に柱、梁、桁、基礎、土台等の構造部分に腐朽損傷があるかどうか等を中心に、建物保全のための通常の修繕によっては存続が不可能になっていないかどうかを検討して判断」します(東京地裁平成14年8月29日判決)。

     

     

    ●朽廃が認められる事例


     

     

    建物が使用できる状態であれば、朽廃には至らないとされ、朽廃が認められるケースは多くありません。

     

    裁判例上、朽廃が認められる場合は、次のような場合です。

    ・かろうじて倒壊を免れている状況で、いつ倒壊するかわからない危険な状態となっている。

    ・基礎等建物の構造部分にほぼ全面的な補修をしなければならず、新築同様の費用が必要となる状態である。

    ・建築後60年が経過し、10年間雨漏りが放置され主要構造部分に相当程度の腐食が認められる居住できるような状態ではない。

     

     

    ●朽廃を否定した判例


     

     

    これに対し、最高裁昭和42年7月18日判決は、築26年経過した建物について、「部分的にみるときは、その骨格部分ともいうべき土台、柱脚部及び外廻り壁下地板、屋根裏下地板等に相当甚しい損耗があり、また、屋根瓦にも同程度の損耗があり、内部造作材も老化しているが、同時に、また一個の構成物である建物全体としてみるときは、自力によって屋根を支え独立して地上に存在し、その内部への人の出入りに危険を感ぜしめることはなく、局部的応急修理の上維持保全の処置を講じるならば建物としての耐久力は安定且つ平衡性を維持し場合によっては増大される状態にあつて、いまだ建物としての社会的経済的効用を失う程度に至つていない、というのであるから、本件建物は借地法にいう朽廃の程度には達していないものと解すべき」と判示しています。

     

  • cat4

    2016.06.01

    火災により建物が焼損した場合、賃貸借契約はどうなりますか?

    建物が滅失したときに、建物賃貸借契約がどうなるかについて、法律上、明文規定はありませんが、賃貸借契約の趣旨が達成できなくなるからとの理由で、賃貸借契約は当然に終了するというのが判例(最高裁昭和32年12月3日判決)です。

     

    では、火災により、どの程度、建物が焼失すると、賃貸借契約は終了するのでしょうか。

     

    この点、最高裁昭和42年6月22日判決は、賃借建物が、火災により、2階部分は屋根及び北側土壁がほとんど全部焼け落ち、柱、天井の梁、軒桁等は半焼ないし燻焼し、階下部分は北側土壁の大半が破傷したほかはおおむね被害を免れているが、罹災のままの状態では風雨をしのぐべくもなく、倒壊の危険さえもあり、そのため火災保険会社は約9割の被害と認めて保険金を支払ったこと、完全修復には多額の費用を要し、将来の耐用年数を考慮すると、建物全部を取り壊して新築する方が経済的である等の事実がある場合には、当該建物は、火災により全体として効用を失い、滅失したものというべきであるとし、建物賃貸借契約はこれにより終了したと解するのが相当であると判示しています。

     

    また、横浜地裁昭和63年2月26日判決は、建物の修復には新築よりも多額の費用を要すること、その一部であり、賃貸借の対象である店舗部分には外形的損傷はないが、電気、水、ガス関係の修復等を要し、多大な損傷を受けていないとはいえないことを認定し、当該建物の効用が主要な部分で喪失し、それを完全に回復するために家主が通常負担する以上の修繕費を必要とし、かえって、当該建物を取り壊して新築するほうが経済的であるから、当該店舗は主要な部分が喪失し、賃貸借の目的を達成されない程度に達したものとし、賃貸借契約は終了したと判示しています。

     

    他方、東京地裁平成6年10月28日判決は、賃借建物部分の柱、梁といった主要構造部分までが炭化して損傷しているが、当該建物は半焼で、火災後も従前通りの外形を保っており、屋根や外壁が焼け落ちるといったこともなく、当該建物の1階部分は賃借人が修理したこともあって使用されていること、地震、台風等に備えて改修工事を行う必要はあるが、その場合どの程度の費用を要するか必ずしも判然としないものの、当該建物を取り壊し再建築した方が経済的であるとまでは認められず、適当な復旧工事を行うことにより再使用が可能であるとして、当該建物部分が火災により全体としてその効用を失い滅失したとは認められないと判示しています(但し、賃借人が当該建物から出火させた上、これを無断で修復したことなどにより、信頼関係が破壊されたとして、賃貸人による無催告解除を認めています。)。

     

    このように、賃貸借の目的になっている主要な部分が焼失して、全体としてその効用を失い、賃貸借の目的が達成されない程度に達した場合には、賃貸借は終了すると解されていますが、この判断に当たっては、焼失した部分の修復が物理的に可能か否かのみならず、その修復が賃貸人の負担する通常の費用で行えるものか否かも考慮されるべきであり、当該修復費が新築する費用に近いか、またはそれを超える場合には、賃貸借は終了したと解されます。

     

      霞ヶ関パートナーズ法律事務所
    弁護士  伊 澤 大 輔
    ☎ 03-5501-3700
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  • cat1

    2016.01.07

    夫に借金があることは、婚姻費用分担額の算定に影響を及ぼしますか。

    一定の借金(債務)が考慮の対象となる余地はありますが、扶養義務者に債務があることから、直ちに婚姻費用の分担を免れたり、そのすべての債務が考慮さるわけではありません。

     

    大阪高裁平成6年4月19日決定は、扶養義務者に多額の債務があっても、その生活が維持されている以上、生活保持義務を免れないと判示しています。

     

    また、東京家裁平成27年6月26日審判は、基本的に、権利者及び義務者の収入に応じて、東京・大阪養育費等研究会による標準算定方式(算定表)に基づき、婚姻費用分担額を算定しており、扶養義務者(別居中の夫)が、実母から、子の学費等の借入をし、 実母に対し借金の返済をしていても、この借金の返済が婚姻費用分担義務に優先するとはいえず、上記婚姻費用分担額を左右するものとはならないとしています。

     

    他方、仙台高裁平成16年2月25日決定は、夫婦が本来共同で負担すべき債務の一部を、婚姻費用の決定にあたり控除しています。

     

    以上から、扶養義務者が、本来、夫婦が共同で負担すべき債務(例えば、住宅ローンなど)の一部を返済しているような場合には、それに応じて婚姻費用分担額が減額される可能性はありますが、扶養義務者が、それ以外の債務を返済しているからといって、それによって直ちに婚姻費用分担額が減免されることはないと思料します。

     

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  • cat4

    2015.12.11

    賃貸人らが、一方的に、賃借人の家財を処分したり、鍵を交換したりする行為は許されますか。

    建物の賃借人が家賃を滞納しているからといって、賃貸人(あるいは賃料の保証会社や管理会社)が、一方的に、解錠をして賃借人の居室内に立ち入り、賃借人の家財を撤去処分したり、鍵穴に鍵ロックを取り付けたり、鍵自体を交換して、賃借人が立ち入られないようにしてしまうことがありますが、これらはすべて違法な行為であり、許されません。このような行為をしてしまうと、賃貸人らは、賃借人に対し、損害賠償責任を負うことになります(大阪地裁平成25年10月17日判決、東京地裁平成24年9月7日判決、大阪高裁平成23年6月10日判決等)。

     

    賃借人に対し、「必ず放り出します。」、「荷物捨てるぞ」、「どこの組のもんや」、「家賃を払わないことは、無銭飲食だ。」、「犯罪者」といった暴言を吐くこと(大阪地裁平成25年10月17日判決)や、「荷物は全て出しました」との張り紙をドアに貼る行為(姫路簡裁平成21年12月22日判決)も、違法行為とされています。近所に聞こえるよう大声で督促することや、早朝・深夜の督促行為も違法行為と評価される可能性が高いでしょう。

     

    このような追い出し行為を理由とする損害賠償請求に対し、賃貸人らから、自力救済行為として違法性を欠く旨の反論がなされることがありますが、自力救済行為は、原則として法の禁止するところであり、ただ、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合において、その必要の限度を越えない範囲内でのみ例外的に許されるにすぎないのであり(最高裁昭和40年12月7日判決)、以上のような追い出し行為が自力救済行為として違法性を欠くと判断されることはまずあり得ません。

     

    たとえ、賃貸借契約自体が有効に解除されていたとしても、結論はかわりません。

    また、賃貸借契約書に「賃貸人は、賃借人が賃料の支払を滞らせたときには、鍵を交換できる。」、「賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は、賃借人の承諾を得ずに建物に立ち入り、適当な処置をとることができる」などとの特約(いわゆる自力救済条項)が定められていたとしても、このような条項は、公序良俗に反し無効であり、自力救済行為は許されません(札幌地裁平成11年12月24日判決、東京地裁平成18年5月30日判決)。

     

    このような違法な追い出し行為をした場合の損害賠償額ですが、家財を処分してしまった場合には、その家財の時価評価額が財産的損害として認められます。

     

    また、財産的損害とは別に、賃借人が居室を一方的に追い出され、不便な生活を強いられた期間や態様に応じて、数十万円程度の慰謝料が認められています。

    なお、家賃の保証会社が、5ヶ月間の間に、賃借人宅を7回訪問し、賃借人の携帯に65回架電し、連絡を求める旨の書面をドアに挟むなどしたのに、賃借人が電話に出ず、折り返しの電話連絡もせず、連絡を求める旨の書面も黙殺したという事案について、まれにみる悪質な賃借人であると非難されてもやむを得ない不誠実な対応であったといわなければならず、こうしたことは、慰謝料額の算定上考慮に入れるべき重要な事情というべきであるとして、慰謝料額を20万円にとどめた裁判例が存在します(東京地裁平成24年9月7日判決)。

     

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    2015.12.09

    退去時、賃借人は通常損耗についても、補修費用を負担しなければなりませんか。

    建物の賃借人は、退去時に建物を原状に回復して返還する義務を負いますが、通常の使用による損耗については、既に賃料の中に含まれており、その修理原状回復費用を負わないのが原則です。

     

    しかし、家主の側からすれば、畳や、床、壁紙など新品状態の方が新しい賃借人を得やすいことから、一方的に、通常の使用による損耗分を含めて修理原状回復にかかった費用を敷金から差し引くことがあり、これが紛争の火種になります。しかし、このような家主の主張が認められるには、その旨の特約がなければなりません。

     

    この点、最高裁平成17年12月16日判決は、「建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(通常損耗補修特約)が明確に合意されていることが必要である」旨判示しています。

     

    そして、上記最高裁判決の事案では、契約書において負担区分表に基づき補修費用を負担することが定められており、その負担区分表には、襖紙・障子紙の汚損(手垢の汚れ、タバコの煤けなど生活することによる変色を含む)・汚れ、各種床・壁・天井等の仕上材の生活することによる変色・汚損・破損については、いずれも退去者(賃借人)の負担とされていましたが、これら文言自体からは、通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえないなどと判示して、通常損耗補修特約の成立を否定しました。

     

    また、下級審判決において、「小修理は賃借人の負担において行う。賃借人は、故意過失を問わず、本件建物に毀損、滅失、汚損その他の損害を与えた場合は、賃貸人に対し賠償義務を負う。」(名古屋地裁平成2年10月19日判決)とか、「賃借人は、本契約が終了した時は、賃借人の費用をもって本物件を当初契約時の原状に復旧させ、賃貸人に明け渡さなければならない。」(大阪高裁平成12年8月22日判決」といった契約条項は、通常の使用による損耗・汚損の損害を賃借人が賠償又は費用負担することを定めたものではない旨判示されています。

     

    では、どのような特約であれば、通常損耗も含めて賃借人が費用を負担する特約として有効かというと、「賃借人が本件建物を明け渡すときは、賃借人は畳表の取替、襖の張替え、クロスの張替、クリーニングの費用を負担する」という特約(しかも、この特約は、他の条項(黒の不動文字)と異なり、赤の不動文字で記載されていた)については、文理解釈上、自然損耗を含まない趣旨であると解することは困難であるなどとし、通常損耗を含めて賃借人が負担すべきとした下級審判決(東京地裁平成12年12月18日判決)が存在します。

     

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  • cat5

    2015.11.30

    過払い金の消滅時効

    ●過払い金の消滅時効はいつから進行するか?

     

    過払い金の消滅時効は、取引が終了したとき、すなわち、最後に借入ないし返済をしたときから進行するというのが判例です(最高裁平成21年1月22日判決)。

     

    但し、この判例は、「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引」に関してのみ、該当するということについて注意が必要です。このような取引においては、取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害になるというべきであり、過払金返還請求権の行使を妨げるものであるから、消滅時効も進行しないというのがその理屈だからです。

    最初に継続的な金銭消費貸借契約が締結され、一定の限度額の範囲内で、何度でも借入をすることができる一般的な消費者金融からの借入では、最終取引日から消滅時効が進行すると考えてよいでしょう。

     

    これに対し、継続的な金銭消費貸借取引ではなく、1回の貸付に対し返済がなされているにすぎない場合には、過払金が発生する度に、その都度、消滅時効が進行すると考えられます。他の期限の定めのない債権と同様に、権利発生時から権利行使が可能であり、その行使を妨げる法律上の障害もないからです。

     

    ●過払い金の消滅時効期間は、5年か10年か?

     

    10年とするのが判例です(最高裁昭和55年1月24日判決)。

     

    商人間の貸し借りにより発生した過払い金には、商事時効である5年(商法522条)が適用されるようにも思えますが、上記判例は、「利息制限法所定の制限をこえて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権は、法律の規定によって発生する債権であり、しかも、商事取引関係の迅速な解決のため短期消滅時効を定めた立法趣旨からみて、商行為によって生じた債権に準ずるものと解することもできないから、その消滅時効の期間は民事上の一般債権として民法167条1項により10年に解するのが相当である。」と判示しています。

     

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    2015.08.27

    商人間の瑕疵担保責任(商法526条)

    企業間の契約書のレビューをしていると、担当者の方から瑕疵担保責任に関する質問を受けることが多くありますので、ここで商人間の瑕疵担保責任について整理をしておきたいと存じます。

     

    商法には、民法の瑕疵担保責任の特則が定められており、商人間の売買において、買主が売買の目的物を受領したときは、遅滞なく検査をしなければならず(商法第526条1項)、この検査により、瑕疵があることまたはその数量に不足があることを発見したときは、直ちに、売主に対し、その旨を通知しなければなりません。ちなみに、「直ちに」とは、できるだけ早くという意味であり、即座にという意味ではありません。

    買主がこの検査・通知を怠ると、売主に対し、瑕疵があることを理由とした契約の解除や損害賠償請求、代金減額請求をすることができなくなってしまいます(同条2項前段)。

     

    但し、その瑕疵が直ちに発見することができない性質のものである場合には、買主が目的物の受領後6ヶ月以内に発見して直ちに通知すれば、これら契約解除権や損害賠償請求権等を失うことはありません(同条項後段)。「直ちに発見することができない瑕疵」とは、その業種の商人が通常用いる合理的な方法で、かつ合理的注意をつくしても発見できなかった瑕疵をいいます。

     

    企業担当者の方からよく質問を受けるのは、この瑕疵担保責任の期間を延長することはできないのかということですが、この規定は強行規定ではなく、任意規定ですので、当事者間で合意が得られるのであれば、期間を延長したり、反対に、期間を短縮したり、瑕疵担保責任そのものを免責としたりすることができます。

     

    なお、売主が、目的物の瑕疵や数量不足について悪意であった(認識していた)場合は、商法第526条2項の適用はなく、買主は、売主に対し、責任追及することができます(同法3項)。

     

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    2015.06.15

    遺留分権者と遺留分の割合

    遺留分とは、法定相続人が、最低限相続できる財産の割合です。被相続人が、誰かに相続財産のすべてを相続させるという遺言を遺して死亡しても、遺留分権者は、遺留分減殺請求権を行使して、相続財産の一部を取得することができます。

     

    遺留分を有するのは、被相続人の妻、子供、その代襲相続人(孫やひ孫など)、父母等の直系尊属です。被相続人の兄弟姉妹は遺留分を有しません(民法第1028条)。

     

    遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合、被相続人の財産の3分の1ですが、それ以外の場合には、被相続人の財産の2分の1となります(同上)。

     

    例えば、被相続人Yが、全財産を第三者Xに遺贈するとの遺言を遺し、1200万円の財産を残して死亡したとしましょう。その父母のみが相続人の場合には、父母は、それぞれ200万円ずつ(1200万円×1/3×1/2)遺留分を有することになります。

    また、上記例で、妻と、2人の子供が相続人の場合には、妻は300万円(1200万円×1/2×1/2)、二人の子供は、それぞれ150万円ずつ(1200万円×1/2×1/2×1/2)遺留分を有することになります。

     

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