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2015.05.08
間違って振り込んでしまった場合、どうすればいいですか?
振込金が受取人の預金口座に入金記帳される前であれば、銀行の振込委任業務が終了していませんので、振込依頼人はいつでも、受取人の取引銀行(被仕向銀行)から、振込依頼人が振込を依頼した銀行(仕向銀行)に対する返金手続き(これを「組戻し」といいます)をとることができます。
また、振込金が受取人の預金口座に入金記帳されてしまった後でも、受取人が誤振込であることを認め、組戻しを承諾している場合には、組戻しに応じるのが銀行実務です。
この点、名古屋高裁平成17年3月17日判決(金融・商事判例1214号19頁)が参考になります。同判決は、振込依頼人が、誤振込を理由に仕向銀行に取戻しを依頼し、受取人も、誤振込による入金であることを認めて、被仕向銀行による返還を承諾している場合には、正義、公平の観念に照らし、その法的処理において、(法的には、預金契約が成立しているが、)実質は受取人と被仕向銀行との間に振込金額相当の預金契約が成立していないのと同様に構成し、振込依頼人の被仕向銀行に対する、直接の不当利得返還請求を認めています。
では、受取人が組戻しを承諾しない場合にはどうすればいいかというと、この場合には、振込依頼人から、受取人に対し、不当利得返還請求権に基づき、返金の交渉ないし訴訟によって解決するしかありません。
なお、受取人が誤振込があることを知りながら、その情を秘して、被仕向銀行に対し預金の払戻しを請求することは詐欺罪にあたるというのが最高裁判例(平成15年3月12日判決)ですので、これを指摘して交渉してもよいでしょう。
霞ヶ関パートナーズ法律事務所
弁護士 伊 澤 大 輔
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2015.05.07
事故等により負傷した場合、どのような損害を請求できますか?
事件・事故により負傷したときに損害賠償請求できる、主な項目は以下の通りです。
①治療費
通常、かかった治療費は実費全額を請求できますが、必要性・相当性の認められない治療費は否定される場合があります。治療期間が相場よりもかなり長い場合も、否定される場合があります。薬代や診断書等の文書料実費も請求できます。
②通院交通費
通院に要した交通費実費が認められます。足を怪我して歩行が困難であるとか、体調が相当悪いような場合には、タクシー代の請求も認められますが、それ以外の場合は、電車やバスなど公共交通機関の料金が基本になります。他方、通院に、自家用車を利用した場合には、1㎞あたり15円のガソリン代を認めるのが保険実務です。
③入通院(傷害)慰謝料
入通院に要した期間や実通院日数に応じた慰謝料を請求できます。その基準には、自賠責保険基準、各損害保険会社が使用している任意保険基準、訴訟等で用いられる裁判(赤本)基準といったものがあります。
④休業損害
事故等によって、仕事をすることができず、実際に収入が減った場合には、その収入減分を請求できます。なお、実際の収入減がなくても、有給休暇を使用した場合には、その分を休業損害として請求できます。
⑤後遺症慰謝料
後遺症が残った場合には、その等級に応じた慰謝料を請求することができます。交通事故の場合には、損害保険料率算出機構による後遺障害等級の事前認定を受けることが前提となりますが、交通事故以外の場合には、そのような制度がありませんので、後遺障害診断書や画像等により立証をし、交渉により折り合いが付けられるかが問題になり、交渉で折り合いが付かない場合には、訴訟によることになります。
⑥後遺症逸失利益
また、後遺症が残った場合には、その基礎年収、後遺障害等級ごとの労働能力喪失率、労働能力喪失期間(基本的に、症状固定日から67歳まで。但し、中間利息を控除する必要)を掛け合わせた逸失利益を請求できます。
怪我をした場合の損害賠償額は、以上のような項目を一つ一つ計算し、これらを積み上げて算出することになります。
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2015.05.01
日本で裁判できる?
霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。
外国人から委任を受け、訴訟提起した事案について、先日、簡易裁判所の担当裁判官から、日本に裁判管轄があるのか、日本法が適用されるのかについて、主張してほしいと言われました。
当方(原告)は外国人ですが日本に居住している方で、被告も日本人ですし、日本にある建物の契約に関する訴訟でしたので、当然のことながら、日本で訴訟提起でき、日本法が適用されるものと思い込んでいましたが(結論として、正しかったです。)、いざその法的根拠となると、日頃意識していませんでしたので、調べてみました。
平成23年に民事訴訟法が改正され、人に対する訴えで、その被告の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合にはその居所が日本国内にあるときなどは、日本に裁判管轄があることが明示されました(民事訴訟法第3条1項)。
また、法人や社団、財団に対する訴えについて、その被告法人等の主たる事務所又は営業所が日本国内にあるときも、日本に裁判管轄があります(同条3項)。
このように、被告の住所や事務所等の所在地が日本である場合のほか、契約において定められた債務の履行地が日本国内にあるときも、日本に裁判管轄があります(同法第3条の3第1号)。
次に、どの国の方が適用されるかということについては、平成19年に施行された「法の適用に関する通則法」という法律に定められており、当事者間でどの国の法を適用するという準拠法の選択がないときは、当該法律行為の当時において、当該法律行為に最も密接な関係がある地の法が適用される旨定められています(第8条1項)。
したがって、頭書の事案では、日本法が適用されることになります。
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霞が関パートナーズ法律事務所
弁護士伊澤大輔
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東京都千代田区霞ヶ関3-2-6 東京倶楽部ビルディング9F東京地下鉄銀座線 『虎ノ門駅』11番出口より徒歩約3分
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2015.04.30
ハンガー泥棒
霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。
先日、マンションのベランダに洗濯したシャツを干していたら、明け方、シャツがすべてベランダの床に落ちてぐしゃぐしゃになり、ハンガー(クリーニング屋でくれる、針金製のものです)がなくなっていました。階下を見下ろしましたが、ハンガーは落ちていませんでした。
その時は、漠然と「風が強くて、飛ばされてしまったのかな?」と思いましたが、なぜ、ハンガーだけが飛ばされたのかわかりませんでしたし、ハンガーに掛けていなかったバスタオルなどの洗濯物には何ら乱れがないことを少し不思議に思いました。
・・・そんなことが2日立て続けに起こりました。
さすがに、2日目は誰かが嫌がらせしているのかと怖くなりましたが、3階で普通人が立ち入ることはできませんし、なぜハンガーに掛けていなかった他の洗濯物が被害にあっていないのかわけがわかりませんでした。
そして、ふと、もしかしたら、カラスの仕業ではないかと思い当たりました。昔、テレビで、カラスが針金などを巣作りに使うといったような話を聞いたことがあるような。
3日目、ためしにハンガーだけをベランダに掛けていたら、明け方きれいに無くなっていました・・・
未だ姿は見ていませんが、皆さんもハンガー泥棒にご用心下さい。
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2015.04.27
不当要求防止責任者講習
霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。
先週、暴力団追放運動推進都民センターの委嘱を受け、大手町において、不当要求防止責任者講習を実施してきました。今日は、その中から、相手方の要求に応じるか否かの判断基準について、ご説明いたします。
①相手方の要求に応じなければならない法的義務があるか?
まず法的義務があるか否かがすべての判断のベースになります。法的に、相手方に対する損害賠償義務があるか否か、相手方の要求額が法的に妥当な金額かを判断することになります。この点、判断に迷う場合には、損害賠償実務に精通する弁護士に相談して下さい。
(法的義務がある場合)最低限、それは履行しなければなりません。コンプライアンス上、当然のことです。
(法的義務がない場合)法的に応じる必要はありませんが、それだけでは対応が硬直化してしまいます。消費者保護、企業のブランドイメージの維持等から、法的義務がなくても、対応すべき場合はあります。そこで、次に検討すべき判断基準が②です。
②他の同様の事案で、すべての者に対し、同様の対応ができるか?(〜お客様平等主義)
(対応できる場合)相手方の要求に応じても構いません。
(むしろ、対応するのが好ましい場合)相手方の要求に応じるべきです。
(対応できない場合)相手方の要求に応じてはいけません。
声が大きい、要求が執拗というだけで、特定の者を優遇・えこひいきしてはいけません。暴力団員による不当要求は、基本的に、これに該当します。ですから、「要求に応じることはできません。」と明確に拒絶することになるのです。
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2015.04.22
民暴副委員長、再任
霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。
先週開かれた東京弁護士会の民事介入暴力対策特別委員会において、副委員長に再任されました。
今年度は、企業が依頼者となる暴排案件に対応する企業暴排部会を担当することになりました。
約30名の部会員と共に、充実した研究発表、暴排活動ができるよう、尽力していきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
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2015.04.17
賃料増減額請求権は、過去に遡って効力を生じさせることができますか?
土地についても、建物についても、賃料増減額請求権は、「将来に向かって」行使することができる旨定められていますので(借地借家法第11条1項、32条1項)、過去に授受した賃料額が不相当であったとしても、過去に遡って、賃料の増額又は減額を請求することはできません。
もっとも、これにかかわらず、当事者間でどのような合意をするかは自由ですので、当事者間の合意によって、過去の一定期間からの賃料額を増減し、精算することは、差し支えありません。
このように、賃料増減額請求権は将来に向かってのみ効力が生じるため、いつ賃料増減額請求権を行使したかが問題になります。その行使は、相手方に対する意思表示によって行われ、書面に限らず、口頭でも行使することも可能ですが、後に争いになることを想定して、配達証明付きの内容証明郵便で行う方がよいでしょう。
また、書面によって行使する場合、賃料増減の意思表示であることがわかればよく、賃料増減の根拠を示すことや金額を明示する必要はありません。しかし、裁判上、賃料増減額請求権を行使する場合には、請求の上限を画する必要から、訴状において金額を明示しなければなりません。
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2015.04.17
勝訴できても、回収できるとは限らないこと
霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。
客観的証拠がそろっており事実の立証が容易である、法的根拠もあり、訴訟提起すれば、請求が認められる(勝訴できる)可能性が高い。
・・・そういった事案でも、勝訴できたからといって、その判決のとおり、お金を回収できるとは限りません。財産の無い人からは取りようが無く、相手方に資力がなければ、回収のしようがないからです。
また、相手方が任意の支払に応じず、どこに財産があるかわからない場合も同様です。この場合、判決に基づき、相手方の勤務先がわかれば、給与の差押えをすることができますし、相手方の住所近くの金融機関・支店をいくつかピックアップして、ダメもとで差し押さえるという方法もありますが、回収できる確度は低くなります。
相手方が他からも借金をしているようで、何度督促しても返済しようとしない場合とか、何ヶ月分も家賃を滞納しているような場合には、相手方の資力が乏しい可能性が高いと言えます。このような場合、予め回収できないことをある程度覚悟した方がよいでしょう。
このように、法的権利があり、勝訴できるか否かと、実際に相手方から金銭を回収できるか否かとは全く別の問題です。
そこで、私は、依頼者の方のコストを軽減するため、相手方から金銭を回収する事案の報酬金については、和解成立時や判決確定時に一括でお支払いいただくことはせずに、実際に相手方から回収できた場合に、その回収額に応じていただくことにしています。
しかし、それでも、受任時にお支払いただく着手金や実費等のコストはかかり、依頼者の方の費用倒れになってしまう場合もあります。私は受任前にそのことを十分にご説明して、依頼者の方のご意向を確認するようにしていますが、くれぐれも事件委任時には、相手方に資力があるか否かもよく調査・検討していただきますようお願いいたします。
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2015.04.16
主張と立証の違い
霞が関パートナーズ法律事務所の弁護士伊澤大輔です。
主張と立証の違いは、民事訴訟の基礎的な知識なのですが、弁護士に依頼せずにご自身で裁判を遂行している方をみると、一般の方は理解されていないんだろうなぁと思うことがあります(民事訴訟法の勉強をしていないのであれば、当然ですよね)。
民事訴訟における「主張」とは、法的請求を理由付ける行為です。訴状(請求原因以下)や答弁書(認否以下)、準備書面に書いてあることは、すべて「主張」、すなわち、一方当事者の意見にすぎません。
訴訟当事者間で、事実について争いがない場合、例えば、原告が「被告に対し、100万円貸した」と主張しているのに対し、被告が「原告から、100万円借りた」と認めている場合には、わざわざ100万円貸したことを立証する必要はありません。
しかし、上記の例において、被告が「お金は借りていない」と否認している場合には、裁判官は、原告と被告との間で、お金の貸し借りがあったのか否か判りませんので、原告の方で、被告に対し、100万円貸したことを「立証」しなければなりません。この場合、原告が、準備書面等でどんなに「100万円貸したんだ!」と繰り返し連呼しても、一方当事者の意見にすぎず、裁判官には十分信用してもらえません。
「立証」(証明)とは、裁判官に事実であると確信を生じさせるために証拠を提出する行為であり、上記例の場合、原告としては、借用書等の証拠を書証(甲第●号証)として、提出する必要があります。
このように、事実について争いがある場合には、立証責任を負う側で、その事実を客観的に裏付ける証拠の提出ができなければ、勝訴することは困難です。
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2015.04.16
【サブリース】賃料減額請求の当否及び相当賃料を判断するために考慮される事情
虎ノ門桜法律事務所の代表弁護士伊澤大輔です。
基本的にサブリースにも借地借家法が適用され、賃料増額・減額請求をすることができます。
賃料増減額について、借地借家法第32条本文には、「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価値の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」と定められていますので、基本的に、これら事情が考慮されます。
■最高裁平成15年10月21日判決
もっとも、最高裁平成15年10月21日判決(判例時報1844号50頁)は、サブリース契約が、賃借人の転貸事業の一部を構成するものであり、サブリース契約における賃料額及び賃料自動増額等に係る約定は、賃貸人が賃借人のために多額の資本を投下する前提となったものであって、これらの事情は契約当事者が当初賃料額を決定する際の重要な要素となった事情であるから、衡平の見地に照らし、賃料減額請求の当否及び相当賃料額を判断する場合に、重要な事情として十分に考慮されるべきである旨判示しています。
この減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては、賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり、賃貸借契約において賃料額が決定されるに至った経緯や賃料自動増額特約が付されるに至った事情、とりわけ、当該約定賃料額と当時の近傍同種の建物の賃料相場との関係(賃料相場とのかい離の有無、程度等)、サブリース業者の転貸事業における収支予測にかかわる事情(賃料の転貸収入に占める割合の推移の見通しについての当事者の認識等)、賃貸人(オーナー)の敷金及び銀行借入金の返済の予定にかかわる事情等をも十分に考慮すべきであるとしているのです。
■下級審裁判例
このように、サブリース契約に関しては、当初賃料額や賃料自動増額特約をはじめ契約に至った事情が重要な事情として考慮されるため、サブリース契約の締結に至るまで、賃貸借期間を通じて賃貸人に多額の収益が生じることを予測した収益試算表を前提として交渉が重ねられたことをもって、サブリース契約における賃料額は、賃貸人の収益を相当程度確保するものでなければならないと判示する裁判例も存在します(東京高裁平成23年3月16日判決)。
裁判例(上記高裁判決、東京地裁平成20年6月24日判決等)では、賃料減額請求の当否や相当賃料額を判断する事情として、
① 当該不動産周辺の地域において、地価や賃料相場の下落傾向が続いていること。
② 固定資産税等の減額により、賃貸人の負担軽減があったこと。
③ 建物建設にかかる借入の金利引き下げにより、賃貸人の負担軽減があったこと。
④ 賃借人が賃貸人に支払う賃料額が、転貸賃料を上回る「逆ざや」状態が相当期間続いていること。
などが考慮されていますが、これらと共に、サブリース契約が締結された事情や賃貸人の収益性確保が考慮されるのです。
